TCS News 2011年11月-12月

        −企業拠点の海外移転に関する考察−     


                                      テクニカルコンサルテーションサービス 代表
                                                            東  敬


ある企業の海外での事業が継続して増大しているとき、当該企業は、目指す国に支店か現地法人の設立を考え、
さらに顧客を増やし利益を上げようとする可能性が出てくる。

過去において、日本でも多くの外国企業が支店や事務所を立ち上げてきた。しかし、20年前から、正確に言うなら1990年代初頭の日本のバブル経済の崩壊から、日本へ投資する外国企業は大幅に減少している。1991年には東京証券取引所に上場していた外国企業は125社に達したが、2011年には11社に、10分の1以下にまで減ってしまった。

他方、非常に多くの日本企業、主に製造会社が、米国やアジア諸国、東欧などの世界市場へ進出している。こうした傾向は、政府によれば、貿易不均衡の緩和のためという説明がなされてきた。しかし実際の企業側の本音は、
急激な円高のせいということになる。
1991年に円ドル為替レートは130円だったが、2012年初頭では77円近辺である。対ユーロで見ても、2008年には1ユーロ160円だったが、今や100円を切っている。

こうした状況下、誰も最適な為替レートがどの水準なのかは知る由もない。なぜなら、為替レートを規定する明確な標準というものはないからである。その証左として、ある地域で経済的ないし紛争危機が起きるたびに、関連
する通貨は激しく変動する。

言い方を変えれば、通貨は商品である。ただし、単純な商品ではなく特別な商品である。その理由は、主要先進国の政府間の合意や交渉で為替レートが決定されるからである。レートの決定要因は、経済力、軍事力・覇権パワー、外交力である。その点において、海外投資を進めようとする企業は、自分たちの国家の能力を冷静に見極める
必要がある。

そうしなければ、母国といえども最終的に助け舟を出してくれないであろう。というのも、政府の大部分を占める官僚は、本質的に自国民のことを心配する存在ではないからである。ましてや政治家は、大道芸人ほどの働きも
してくれないであろう。

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